伝える技術を身につけよう

 

この一年間で、獣医学領域の心構えを教えてきました。ですから動物に対する対応の仕方、飼い主さんへの対応の仕方等の考え方が備わってきたと思います。私自身、皆さんが成長したことは講話の感想を読んでいて感じます。これまでの講話を通して知識をインプット(理解)して来たとは思いますが、本当の意味で理解するためには他者にアウトプット(伝える)していくことが大切です。知識は他者に伝えてこそ身につきます。なぜなら人に伝えるということはまず自分が理解していなければ伝えることができません。また動物看護師という仕事をしていく上で相手に上手に伝えることができる能力を身につけておくことは大切です。

 

週に3回講話をして来ましたが、そのことを何となくでいいのでお母さんや友人、恋人に話してみてください。伝えたい事を誰かに話すことは自分自身のためになります。段々と慣れてきて、伝え上手になるからです。

 

以 前、ノーリードで散歩をするわんちゃんの飼い主さんをどうにかして欲しいという相談を受けたことがあります。ノーリードでお散歩する飼い主さんには、「わ んちゃんが可哀想だ」「うちのわんちゃんはお利口だから人を追いかけたりしない」「うちのわんちゃんは安心」といった認識があります。逆に何とかして欲し い人は「怖い」「追いかけてこない保障はない」といった精神面での苦痛をもっています。仮にノーリードのわんちゃんがいかにお利口でおとなしいわんちゃん だとしても、事故などのアクシデントでパニックになり暴走しないとも限りません。ですから飼い主さんと話し合いをし、理解していただかなければなりませ ん。しかし、平行線をたどり理解していただくことが難しい場合も多いのです。こういったトラブルの相談を動物看護師は受けます。マナーの徹底は大切です。 マナーについて指導していくためには伝え方が重要なポイントと言えます。

 

飼 い主さんがなるほどと納得する説明ができるようになるためには、日頃から知識を伝える練習をしておかなければなりません。また、納得して頂くということは 飼い主さんの安心にもつながります。ペットたちのリーダーは飼い主さんですが、私たちはよき飼い主さんになっていただくために飼い主さんのよきリーダーで あるべきなのです。

 

ま た私たち動物病院で働く者は多くの人に正確に情報を伝えていかなくてはなりません。例えば「うちのわんちゃんの退院はいつごろでしょうか」と問合わせが来 た場合、獣医師はまず動物看護師に状態を尋ねます。なぜなら犬舎掃除や犬の散歩などお世話を主にするのが動物看護師だからです。その際に「だいぶん良く なっていると思います。」といった曖昧な返答では私たち獣医師の判断は鈍ります。話術により正確に情報を伝えることも大切な技術なのです。

 

得た知識を身につけるために、そして伝える技術を向上させるためにもまず身近な人に今日の講話について話してみましょう。