命のかけ橋としての動物看護師

竜之介動物病院ではずっと仔猫の里親募集の活動を行っています。今まで里親に出した仔猫の数は1,000頭以上、ひょっとすると2,000頭を超え ているかもしれません。竜之介に来る理由は捨てられた、母猫の育児放棄などさまざまです。離乳も終わっていないヘソの緒がついた仔猫がビニールに入れられ 捨てられていた、というようなこともよくあります。

 

 こういった仔猫たちは、24時間つきっきりでお世話をしてあげないと育ちません。動物看護師一人が2時間おきにミルクを与えて、排尿や排便もさせ て、家に連れ帰って夜間もお世話して、まさにフルタイムで育てるのです。それでも母猫の母乳や世話に及ばず、半分近くの仔猫たちは死んでしまいます。それ くらい親猫がいるのといないのとでは違う。代わりに育てる看護師の苦労も並大抵ではありません。そうやって苦労して育てて仔猫の目が開いて動き始めると、 当然ながら看護師には愛情が湧いてきます。かわいい子ならなおさらです。育ての親として「私がこの仔猫を飼ってもいいですか」という看護師が出てくるのも 当たり前ですね。

 

 けれども“かわいい子ほどもらってもらいたい”と思うのがプロとしての心構えではないでしょうか? かわいい仔猫は誰がみてもかわいい、必ず誰かに貰ってもらえます。看護師として働いている限り、仔猫を育てるという機会は付いて回ります。常時仔猫の世話 をしていると少なからず奇形のある仔猫、かわいくない仔猫などが出てきます。なかなか里親がみつからないそういった仔猫こそ、動物看護師がなんとかしない といけない子たちです。ネコちゃんの寿命は15、6年、一人の人間が飼える数は5~6頭ぐらいでしょう。数が限られているわけですから、引き取り手のない 仔猫のために看護師は居場所を開けておいて欲しいのです。顔立ちがかわいい子を育てたいという気持ちは一般の人ならごく普通の感情でしょうが、プロとして は間違った感情だといえます。“この子は私が育てないと誰からも面倒を見てもらえない!”というような仔猫との出会いがいつか必ずあります。インスピレー ションを感じるような仔猫がいつ現れてもいいように、自分のキャパを空けて準備をしておきましょう。

 

 長い人生で世話をするネコちゃんの数はとても多いものです。里親を探して、たくさんの仔猫を託し、命のかけ橋になってあげてください。そしてその 仔猫たちが幸せになれるように、道先案内人になるのです。しつけの仕方、ワクチンの接種の案内などさまざまなフォローを行って、ネコちゃんたちがすこやか に長生きできるように導く。そういったことも動物看護師として重要な仕事であることを、心構えとしてみなさんの心に留めておいてほしいと思います。