感覚を磨く

 最近、病院で使う新しい器材・機器などがたくさん出始めました。こういった機械は毎年新しいものがどんどん出て、3年も経つと古いものになってし まいます。たとえばエコー。1年前のものと最新のものを比べると、鮮明度がまったく違うので病気の発見度もアップします。新しい機器で調べたり、レントゲ ンを撮ったりというのは、動物看護師の仕事です。毎年新しいものになってその度に使いこなすのも大変ですが、将来のみなさんの仕事ですので、しっかり覚え て下さい。

 

 けれども忘れてはならないことは、診断を下すのは人間だということです。診断を下すにあたっては、検査の前に実は8割ほどは“この病気だろう”と いう診断をつけています。検査は予想した診断の証拠固めといってよいでしょう。いくつかの症状から結石があるだろうという予想をしてエコーで発見し、診断 が決定するのです。最近のエコーの画像は鮮明なので1,2㎜の結石も見つけられるようになってきましたが、逆にある程度診断をして画像を見ないとこの大き さは見逃してしまう大きさです。なんの病気か予想が全くつかないままに、なんだろう?と思って画像を見てもまず分かりません。だからみなさんは診断基準と いうものをしっかり持ってほしいと思います。最新の機器は確かに素晴らしい機能を持っていますが、頼りすぎはよくありません。人間の感覚というものは、機 械より優れているところも多いのです。

 

 人間には五感というものが備わっています。診断するには自分の目・耳・鼻・口・手の感覚を研ぎ澄ましてください。触ってみて皮膚が固ければ脱水か も、膿のような臭いがする、この色のいぼは腫瘍かもなど五感をフルに使ってください。とくにみなさんは、学院で動物の飼育をしているので普通の人より臭い に敏感だと思います。いつもと変わった臭いを嗅ぎわけるなどはほかの人より、優れているはずです。さらに第六感というのもありますね。直感といってもよい でしょう。これは人間誰しも持っているものです。けれども、科学的ではないという人がいて、何となく隠してしまったりしますね。誰しも“電話がかかってく るころと思っていたら掛かってきた”とか、“ある人のことを考えていたら偶然会った”などという経験があるでしょう。「なんだかいつもと違うんです」とい う飼い主さんの感覚には、対応してあげなければいけません。いつもワンちゃん・ネコちゃんと暮らしている飼い主さんの感覚は、その子に対してとても敏感で す。

 

 第六感が鋭いのは動物です。津波が来るまえに逃げ出したり、大地震のまえに騒ぎ出したりということがよくあります。人間にも第六感は備わっている のにうまく働かないのは、情報をたくさん持っているからです。テレビで天気予報を晴れの予報を見てしまうと、天気予報を信じてしまって、第六感は働きにく くなります。データに頼り過ぎるのはよくないことです。鋭い感覚でもの見る訓練をしてください。常になにかを感じようと感覚を働かせるのです。良い獣医 師、動物看護師はかならず良い直感を持っているものです。訓練して自分の感覚を磨いて下さい。