コミュニケーションの重要性
私たち動物関係の仕事というのは、トリマー・動物看護師などいろいろあります。皆さんがこれから目指すのはただのトリマー・動物看護師でなく、 オールマイティーなトリマーであり、動物看護師です。とは言っても動物関係の仕事において、大事な基本はどの仕事も同じものです。
将来動物病院で働くようになると、お父さんやお母さん、友だちなど周りの人から「どんな仕事をしているの?」と聞かれることでしょう。そして、お そらく答えることは難しいと思います。動物の世話、掃除、受付、治療、ダイレクトメールの発送準備や、ポスター貼りなど多くの煩雑な仕事が皆さんの仕事と なります。どうですか、パッと一言では答えられないですね。例えばレストランだと「食事を作っています」と言えます。私たちの仕事は臨機応変でなくてはな らず、それができて当たり前といった仕事です。
また飼い主さんの心のケアというのも、私たちの大事な仕事の一つです。今は動物のケアを学んでいる最中で、飼い主さんの心のケアといってもピンと 来ないかもしれませんね。以前あった話をしましょう。ある飼い主さんが病気で2週間ほど入院することになり、ワンちゃんは実家に預けられました。退院して 戻ってくると、飼い主さんはその子にネコが乗りうつったと言い始めたのです。病院に連れて行ったところ、獣医師からは「外の動物なんか乗りうつっていな い」といわれ、2つ目の病院でも全く同じことをいわれたそうです。飼い主さんはまったく納得できず、竜之介に来られました。「先生、夜中にうちの子が ニャーニャー鳴くんです」とおっしゃる。飼い主さんは少し精神的に不安定だったのではないでしょうか?そこで少し考えた後「本当ですね、ネコが乗りうつっ ていますね」と言ってみました。すると飼い主さんは笑顔になって「そうでしょう!」と喜ばれます。さっそく治療ということで、ビタミン注射をして2,3日 後また連れてくるようお話しました。
この飼い主さんに“ネコなんてとりついていない”ということは飼い主さんを拒絶することです。飼い主さんが不信感を抱くと信頼が築けず、治療もで きません。一旦受け止められて信頼感を抱くようになれば、ビタミン注射でもよくなったと信じます。大変だと病院に連れてこられるペットのうち、本当に大変 ですぐに処置が必要なのは1/3位です。しかし残り2/3の飼い主さんたちも“大変だ”と思っているのですから、「さっそく処置します」と合わせてあげる ことも必要です。信頼を築くためにこれも習得すべきキャリアと言えるでしょう。飼い主さんをリードするには、人間として飼い主さんよりワンランク上の人間 にならないといけません。これからインターンシップ、アルバイト、友だちとの付き合いなどすべてが自分を磨く手段となります。人を動かす人間になる、飼い 主さんの指導者にならなければなりませんが、指導するには指導するなりの人間性が必要とされます。人間との間に安心できるコミュニケーション能力というの を身につけて下さい。動物のケアも大事だけれど飼い主さんの精神的なケアも重要と覚えておいて欲しいと思います。