インターシップの心構え

これから夏休みにかけて、皆さんはインターンシップという形で現場に出て行きますね。これはどういうことかというと、皆さんは動物病院に迎え入れられると いうことです。ふつうは一般の人が「実習させてください」と病院に来ても、受け入れてもらえません。病院の裏方を任せることになりますから、素人では無理 なのです。皆さんが受け入れられるのは、九州動物学院という動物の学校の学生だからです。この学生の時期だけの特権を生かして、ぜひ多くのインターンシッ プに出かけてください。

皆さんがインターンシップに出る前に、覚えていてほしいことがあります。学生と働くということはまったく違います。飼い主さんが人にワンちゃん、猫 ちゃんを預けるということは、子どもを預けるのと同じだと思ってください。皆さんが動物病院で働く上で、やってはいけないミスというのがあります。まず一 番やってはいけないことが、ペットを逃走させてしまうことです。ペット一匹が逃走すると、その動物病院が倒産してしまうほどの事件になってしまいます。事 件の質からいうと、亡くなったというほうがそこで区切りがつくのでマシです。見つからない限り、ずっと探し続けなければならない。ペットが居なくなってし まったというのは、最悪のミス、ありえないことです。竜之介動物病院でもペットを逃がしてしまった職員は、即解雇です。ペットを逃がすような職員は必要あ りません。

2番目は落下です。落ちる、飛び降りるは動物として当たり前の行為です。それを“自分で飛び降りてしまったんです”というような言い訳は、おかしな 言い訳です。動物は抑えられたりすると、逃げようと行動します。そういった言い訳は、動物の管理や行動を知らない人の言葉で、プロとして失格です。落下事 故は、時間や経験をつむことで減らすことはできますが、それでも稀に起こってしまうことがあります。くれぐれもペットを落下させて骨折、ということのない よう気をつけてください。こういう事件があると危険人物ということで、病院のペットには触らせないということになります。

この2つは最高レベルの失敗です。以前ある動物病院のペットホテルからネコちゃんがいなくなったことがあります。朝、病院にスタッフが来たらホテルのケー ジにネコちゃんがいなかった。スタッフも全員で探して、飼い主さんも探しました。行方不明のチラシも作って、ペットの集まるようなところに貼ってもらった りもしました。その病院からペットが逃走した、ということが多くの人に分かってしまうので、当然評判も落ちます。一年ほど経って、その動物病院は潰れてし まいました。居なくなるのは大変なことです。飼い主さんは死骸でもいいから見つからない限り、ずっと気がかりで探し続けます。皆さんが動物病院に迎えられ るというのは、その病院にとってはとてもハラハラ心配なのですよ。そういったリスクなどもすべて病院側が引き受けるということになるのです。学生が逃がし たとしても、その病院の責任になるわけですからかなりの覚悟をして皆さんを受け入れています。皆さんもそのことを認識してください。動物病院が皆さんを迎 え入れるということは大変ありがたいことです。大きな事件や事故につながらないよう、心してインターンシップに参加してください。