動物の事故防止のために
5月、6月でワンちゃん、ネコちゃんが動物病院に来る原因は何が多いと思いますか?
この時期はケガがとても多くなってきます。ワンちゃん同士けんか をしたり、ワンちゃんがネコちゃんにかみついたり、それを止めようとして飼い主さんがケガを負ったということもよくあります。発情期と関係があるのでしょ う。
人間から見ると突然かんだように見えても、動物がかむときには何か理由があるものです。鼻と鼻をすりよせる、ネコちゃんが犬によっていくなどは危険 な状態です。ワンちゃんは、知らない犬や人とは目を合わせません。逆に顔をそむけたりして、目を合わさずトラブルを回避しようとします。だから顔を近づけ てくるワンちゃんを、攻撃したりするのです。ワンちゃんと人間の行動や心理は違います。それを知らないと、危険を察知することはできません。ワンちゃんの けんかは、生きるか死ぬかで本気でかみ合いますから、大きな事故につながることが多いのです。
よく土佐犬など大型犬が人をかんで、新聞やテレビのニュースになっていますね。人間に怪我を負わせる怖い犬だというふうにとりあげられますが、竜之 介動物病院の土佐犬のさいごうくんは、かしこく良い子です。しかし小型犬が人をかんでもニュースにはなりませんが、大型犬が人間に怪我をさせるとメディア の扱いは大きいですね。一年ほど前、飼い主さんが自分の土佐犬にかまれて死ぬという事件がありました。その飼い主さんは犬舎もきれいにし、散歩にも行って きちんと世話をしていたようです。ワンちゃんも凶暴な子ではなく、かわいがられていました。でも何かが悪かった。多分じゃれあっているうちに、首などにか みついてしまったのでしょう。皆さん、こうやって人間をかんだ犬はどうなるか知っていますか?人間をかんだ犬は100%安楽死です。とくに法律などあるわ けではありませんが、社会のルールとして殺処分されてしまいます。
飼い主さんなど周りの人がワンちゃんのことをよく知らないと、ワンちゃんが悪くなくても結果としてトラブルに巻き込んでしまいます。
私が公園で散歩 をしていると、小さな子どもがワンちゃんの耳を引っ張ったり、顔を近づけたり“これ以上やると危ないな”というような場面によく出会います。これ以上やる と事故につながると、身近な人が教えなければなりません。また事故を事前に防ぐことが飼い主さんの仕事であると教えるのも、私たちの仕事のひとつです。ワ ンちゃんをトラブルに巻き込まないことが、人間のパートナーとしてのワンちゃんの地位向上につながっていきます。そのためには行動学を学び、常に動物を見 てさわって経験を積まなければなりません。この前、学校でもふくろうがマックスにかみつく事件がありましたね。学校の飼育動物からも学ぶことは沢山ありま す。多くの動物にさわる経験をして、社会に出て飼い主さんに指導してあげてください。そういうことも我々の仕事として重要だと思います。