本質=目標を忘れない自分であるために
<p>私は獣医師として、年間で55,000頭(件)の動物の診療にあたります。ざっと計算すると、一日平均150頭(件)で、一番多い時が200件あまりの 動物を診察することもあります。そうなると、1日の診療時間が8時間としても、1件平均3分が1頭あたりの診察時間ということになります。これを現実問題 ととらえた時、私はいろんな対策を考えます。<br /> <br /> 一番早いのが「獣医師を増やす」こと。しかしながら、現実には難しい問題がいろいろあります。その第一は、診療方針です。開業以来ずっと、「動物のため に」「飼主さんのために」が一貫した私の方針です。どんなに患者数が増えようとも、この方針を転換するつもりはありません。となれば、私が「増える」こと はできませんので、この方針を共有できる獣医師や動物看護師は不可欠となります。そうすれば方針転換をすることなく、さらに多くの患者様の診療がかなうわ けです。<br /> <br /> 例えば、「肥満」。獣医師である私がするのは「診断」までです。その後の肥満に対する指導は、動物看護師の仕事。低脂肪食のアドバイスやカロリー計算・食事制限の仕方など、飼主さんが自宅できちんとできるように丁寧に説明する必要があります。<br /> 獣医師である私たちは、診断から経過指導まで、できればきちんと行いたい。ただ、現実は診察時間の壁にその思いは阻まれます。そんな時、私たち獣医師の意 を汲み取り、同じ感覚で動ける動物看護師がいればその思いはかなうのです。実はこれこそが、九州動物学院建学の精神だったわけです。<br /> <br /> これから皆さんは、解剖生理学や病理、内科・外科など獣医学的な講義はもちろん、公衆衛生・倫理と法など法規にかかわる講義など、専門分野の講義は決し て簡単ではありません。動物看護師を目指す皆さんもいれば、トリマーや飼育員など目指す方向はさまざまでしょうが、基本は同じ。今はその「根っこ」の部分 を、いろんな講義を通じて伝えていきたいと思っています。<br /> <br /> さあ、皆さんの2年間は始まりました。全く違う環境から集まった皆さんです。この新しい環境を好機ととらえ、いい意味での「キャラ転換」してみて下さ い。「名優は役柄を選ばない」と言われますが、私たちもそう。「いい人」だと称される方々は、どんな環境下でも順応することができるのです。それを習っ て、今までと違う自分をまずは演じてみて下さい。最初は演技でも、それが身につけばそれもあなた方の武器になるはず。固定化した自分をまずは脱ぎ捨てて、 新しい環境で、新しい自分を見つけてみて下さい。どんな環境にあろうとも、どんなにキャラ転換をしようとも、「本質=目標」が揺るぎないものであれば大丈 夫。変化に臆病にならないで、積極的にチャレンジしていきましょう。</p>