環境が与えるもの

皆さんはいずれ社会に巣立って行きますが、その中で分かれ道に遭遇することがあるはずです。就職に関してもそうです。「こっち?それともあっち?」と選 択を迫られることがあったでしょう。人生には幾度となく岐路に立つ瞬間があります。その時あなたは、いったい何を基準にして選択をしますか?
たいていの場合、らくな方を選択しようと考えるはずです。仕事先であれば、将来有望であるとか、待遇面がいいとか。お休みが基準の場合もありますね。そう、これが本音だと思います。

でもちょっと待って。もし選択の基準がそうであるならば、少し方向性を変えてみてほしいのです。「より忙しい方を」、「より厳しい方を」選択するのです。 甘い道は選ばない。厳しい環境に身を置くことでしか学べないことはたくさんあるからです。あえていばらの道を選択することが、自身を向上させる早道だとし たら、選択の基準を大きく見直してみる価値はあると思いませんか?このように人は、環境に大きく影響を受けます。生まれ育った環境、出会った人によって、 その成長は大きく左右されるのです。

 人だけでなく、動物もそうなのです。例えばある飼主さんは、愛犬(ゴールデン)をひどく可愛がっていました。傍目に見て「甘やかし過ぎだろう」と思うほ ど。ゴールデンは元来頭のいい犬種。当然のように自分が優位に立ったと勘違いし始めます。結果、飼主さんは咬まれ入院。退院後、相談の電話が入りました。 訓練所をお勧めしようとは思いましたが、獣医師としてはその前に「去勢・犬歯のカット・女性ホルモンの投与」が必要だと指導しました。
ところがこの飼主さん、予想通りの反応を示したのです。「そんなことかわいそうでとてもできません」。結局決心がつかないまま、愛犬が「怖い」と感じながらも、そのままの毎日が今も続いているようです。本当にかわいそうなのは、どっちだと感じますか?

 その逆の例もあります。捨て犬ばかりを10頭も飼育なさっている飼主さん。この方の犬は当然、みな出生は違いますが、不思議とみんなよく似ていて、とても利口な犬ばかり。そう。犬は持って生まれた素質ではなく、育った環境によって大きく変わるのです。

 皆さん方も同じです。親御さんから頂いた資質というものは当然にしてあります。ですがそれは、その後の生き方でいかようにも変えることができるのです。だとしたら、どんな選択が必要なのか、もうわかりますね?
動物のプロになるということは、専門知識や技術もさることながら、人間的な成長は必須です。成長に必要な環境というのは、厳しさの中にしか存在しません。 岐路に立たされた瞬間、強い意思をもって、常に「厳しい方を」・「少し高い方を」選択する癖をつけて下さい。それが次のステージへの鍵になるからです。