同じ命としての認識を
私たちが動物病院で日々かかわっているペットたち。もちろん動物ですが、プロとしては「人間と同じ」という感覚で接することが、実はとても大切なことな のです。例えばよくあるのが、「そこの猫、持ってきて」とか、「そこに犬置いといて」などなど・・あまり違和感もなく、口にしてしまう人がいます。そう、 これは認識の差。つまりは、「動物」を「私たちとは違うもの」として、別の感覚で認識しているから言葉になってでてしまうのです。
でもプロである私たちにとっては大切な患者さん。認識の差では済まされません。猫も犬も、「連れてくる」であり、決して「持ってくる」であってはいけな いのです。新人の中にはなかなかこの感覚に慣れない人もいますが、これは徐々に現場で身についてくるものですので心配いりません。
ただ、常日頃の心がけ一つでもっと確実に身につけることもできます。それは、「動物に話しかけること」。朝起きたら自宅のペットに向かって、また、飼育動 物たちに向かって、隣の友人にするように話しかけるのです。「おはよう」でもいい、「今日は体調よさそうだね」なんてのもいいですね。常に対等な目線で語 りかけることで、不思議と違和感なく認識が変わってきます。何も知らない人が見たら、少しヘンに感じるかもしれない動物とのコミュニケーションが、将来の 勉強になるとしたらやってみる価値は十分ありますよね。
このコミュニケーションにプラスしてほしいのが、身体に触れてあげること。特に老犬(猫)には、非常に大切なことです。老犬(猫)の飼主さんがよく口に するが、「寝ているからそっとしておいてあげて」。これは正解のようでちょっと違います。犬は一日のうち18~20時間は寝ています。年老いた犬猫は、そ うでなくともよく寝ます。「よく寝ているから」とずっとそのままにしていたら、だんだん刺激を受けることがなくなって、老化は加速します。
気持ちよさげに寝ていてもいいですから、そっといつも触れていてあげてほしいのです。年を取れば人間も同じですが、感覚はだんだん麻痺してきます。その一 番の薬は「刺激」。なでてあげることで皮膚から「気」というやさしい刺激が伝わります。そして「語りかける」ことが脳細胞を活性化させるとしたら、どうで すか?いつでもどこでも気軽にできるこの穏やかなコミュニケーションが、老化を減速させるのです。何よりも効果のある「良薬」だと思いませんか?
感覚というものは、きっとこんな毎日の積み重ねで研ぎ澄まされていくものなのです。世の中には「言葉を持たない動物たちは感情もないのだ」と認識してい る方々もいます。かたや私たちは、言葉を持たない動物たちの声なき声を理解しようと学んでいるのです。同じ命として区別されることがない世の中にするため には、確かな認識を持つリーダーが必要です。動物たちに声をかけることがその第一歩。今日からレッスンワンとして、楽しんで始めてみませんか?