敬天尊命(けいてんそんめい)
2年間学んだ皆さんは、動物病院やペットショップなど、動物業界のさまざまな業種へと就職していきます。身につけた知識や技術、それを形にしたライセン スなどが皆さんの武器です。まだまだもろさもあるでしょうが、経験値がそれらの武器を強くしていってくれる。就職後は、そんな道のりが続くのだと思って下 さい。
さて、動物病院に就職したいと思っている皆さんの選択基準は何ですか?待遇や設備ですか?それとも立地条件?いや、やっぱり人間関係でしょうか。人それぞれ、価値基準は違うと思うのですが、ではちょっと視点を変えます。
「いい動物病院と悪い動物病院」の選択基準は何だと思いますか?よく雑誌や情報番組などでその類のアンケート調査が実施されていますが、それこそさまざまな選択基準が設けられています。しかし、その中で群を抜いて回答が多いのが、『動物看護師(受付)の対応』です。
もちろん、獣医師の見立てや技術(腕)はトップ項目でしょう。ですが、いくら獣医師の腕が良くても、そのアシストをするべき動物看護師の対応が良くなけ れば、満足度は半減・・どころか、ゼロにさえなってしまうことさえあります。そのくらい動物看護師の良し悪しが動物病院の評価を左右するのです。
例えば、目の手術を控えた飼い主さんとペット。獣医師は「手術後、一週間の入院を要します」と今後の治療方針について説明したとしましょうか。患者さん はいくつかの質問を投げ、疑問が解消した後、「わかりました。よろしくお願いします」と信頼を以って任せて下さいます。ですが、この後が問題であり、山場 です。
手術など獣医学的な疑問は解消しても、飼い主さんが抱く不安が全部解消したわけではないのです。費用的な問題やその後のケアについてなど知りたいことは いっぱい。その疑問は全て動物看護師に向けられます。「大丈夫です」という禁句を使わないで安心して頂き、なおかつそれを獣医師にも報告しておかねばなり ません。獣医師の立ち位置からは決して見えない重要な状況を、その感情の機微まで推し量り、正確に伝えること。この橋渡しがパーフェクトであって、初めて 治療は成功するのです。これがチーム医療であり・・本当の意味でのパラメディカルです。
動物病院によって、また獣医師によっても、獣医療の考え方は違います。また、同じ獣医療であっても得意分野が違ったりもするし、規模も、スタッフの数 も、設備もさまざまです。そんな数多ある動物病院の中から、患者さんはそれぞれの「求めるもの」に照らして、取捨選択します。しかし、どんなに違いがあろ うとも、命を扱う現場であることに変わりはありません。命の尊厳に格差があってはならないのです。
私たちが理念に掲げている『敬天尊命』・・その意味を考えたことがありますか?言葉をそのまま受け止めてほしいのですが、この中には一言では言い尽くせ ない思いを込めています。動物たちの命を護るプロを目指す者として、この理念が意味するものをしっかりと胸に留めてほしいと願います。