治療とは・・物語を演出すること
毎日治療にあたっていると、いろんな飼い主さんと出会います。
その中に 「ペットに無関心な飼い主さん」 というのがいます。
具合が悪くなって連れてこられた猫。
ひどい風邪をひいていて、熱は40℃を超えています。
のどの痛みからよだれはたれ、眼は充血し涙がいっぱい。
もちろん鼻水で鼻周囲はこぺこぺです。
そんな状態の猫を前にしても 飼い主さんは「無関心」。
入院して3日位経つと、猫は一旦すごく状態が悪くなります。
じつはここからが 「物語のエピローグ」 。
夜中に飼い主さんに連絡します。
「状態がすごく良くないです。面会に来てください」。
無関心な飼い主さんも、さすがに夜中の電話。
緊急事態とばかりに 家族みんなでかけつけてきます。
無関心の原因は 「知らない」 こと。
夜中に苦しんでいる姿を見ること。
点滴につながれたまま横たわる姿を見ること。
そして 鳴き声にならない声で、それでも飼い主さんの姿を見て
必死で鳴く姿を見れば、どんなに、無関心な飼い主さんも豹変します。
「どんなことをしても助けて下さい」
ここから飼い主さんとの二人三脚の治療物語はクライマックスを迎えるのです。
治療と飼い主さんの熱意によって、猫はめでたく退院の日を迎えます。
「治療費は21,000円です」
「高いなぁ!」
それでも この「高い」治療費を支払った飼い主さんは、
元気になった猫と一緒に、付加価値も得るのです。
それは 「飼い主と動物(猫)との命の絆」 です。
動物の治療をするのは当たり前。
同時に 飼い主さんの意識も変える。(治療する)
これが 動物病院という命の現場で働く私たちの喜びです。
プロを目指す皆さんに この醍醐味を味わえる人になってほしいと思います。